日経春秋 春秋(3/6)

 秀逸。

ただ、当時の厚生省の職員で、起訴されたのは松村明仁・元生物製剤課長1人だけ、というのがふに落ちなかった。薬務行政を統括する薬務局長に落ち度はなかったか、官僚機構の頂点に立つ事務次官の責任はどうなのか。業務上過失致死の場合、実務者のほかに管理者が罪に問われることも少なくないのだが……。
▼局長や事務次官が罪を問われない理由は、彼ら法律職の事務官キャリアは、専門的な知識や判断能力がなく、医師の資格を持つ医系技官である生物製剤課長の判断に従わざるを得ないから。こんな話も聞こえてきた。はて面妖な。知識も判断能力もない人が、何故に局長・次官に就くのか。
▼スピード出世の事務官が、医系技官、薬学系技官、衛生工学系技官など専門職の利権を温存する、という当時の厚生省の人事構造が、薬害を続発させる遠因ではなかったか。最高裁で元課長の有罪は確定したが、役所の構造にはまだほとんど手がついていない。公務員制度改革は薬害根絶へ避けて通れない道だ。

 各紙社説より優れた見解。
 
追記
 ⇒松村元課長の功績についてそろそろ言っておくか - memorandum
 自分がすっきり書けるわけではないけど、功罪以上のディテールはありそうです。