あるよく売れた本で

 海外ものだけど。
 今年はなんども読み直していて、その度ごとにある種、ぞっとする感じがする。
 筆者、たぶん、誰に通じないだろうとわかっていて書いている。その奇妙な孤立感と痛みのような感じと、複雑なパズルのような世界がある。
 いわゆる書評などでもまるで理解されている形跡もないし、信奉者みたいな人たちも読み解いていないとしか思えない。
 マルクス・アウレリウスの自省録も、表面的にわかる部分と、そうは通じないだろうといういう痛みのような、微妙な部分がある。
 通じないだろうし、誤解されるだけだろうと、そしてそもそも書く意味などあるのだろうかと、そう思いつつも書いているという、そういう心の息吹のようなものが、ぞっとするほどわかってしまうことがある。
 そういうのは読書の深い喜びとも言えるだろうし、ある種の絶望とも言えるかもしれない。