日経社説 首相決断を生かし実効ある救済法を

 これは良社説だった。

 和解協議での政府の姿勢は、国家賠償法が規定する最低レベルの「国の責任」に固執し、薬害の発生・拡大を止められなかった薬事行政の失策・怠慢の責任を認めようとしない点で、遺憾だった。
 しかし原告・被害者が裁判で求めたものを立法によって実現させるのは、事態の解決策として訴訟の和解よりも望ましい面がある。全国5つの裁判所に起こされた訴訟のうちの1件での和解協議をまとめるよりも立法によるほうが、早く広く被害者への補償・救済をはかれるだろうし、何より、救済法を成立させれば、国権の最高機関が「この薬害には国に責任がある」と認める明確な意思表示になるからだ。
 原告側が譲れない要求とした一律救済とは、肝炎の感染源になった血液製剤の種類や投与時期を問わず一律に被害者に補償をすることを指す。既に出た5つの判決で一律救済を国に命じた例はなく、和解協議を進めている大阪高裁も「被告国側の譲歩がない限り、一律救済は和解案に盛り込めない」立場だ。
 薬害肝炎訴訟で原告は国家賠償法1条「公権力の行使に当る公務員が違法に他人に損害を加えたときは、国は賠償する責に任ずる」を根拠に賠償を国に求めている。つまり司法の場で争われているのは、「違法か否か」という極めて狭い範囲での「国、行政の責任」なのである。

 すっきりとフレームがまとまっている。
 そして。

人の命や健康にかかわる行政は、司法の場で問われるのよりも高いレベルの責任を負う、との認識に基づく発言だろう。

 ここはとてもむずかしい。