世の中には他人の弱みをうまく見つけ出す才能の持ち主というのがいる
それは、けっこう、天才的に、芸術的に。
そして、そういう才能に溢れた人は、その才能に依拠して生きるようにもなる。
で、と。
人は自分の弱みというのを覆い隠すように自我を形成しつつ、その暴露の恐怖を感じ取っている。だから、人の弱みを見つけ出す才のある人にその恐怖を投影して恐れる。
これは、恐れるなというのが無理。
そのために、弱みを持つ人は、それが弱さでないかのように自我を強化することがある。
では、その自我強化と、弱点突き芸人の芸と戦ってどっちが勝つか。
これは、弱点突き芸人のほうが勝つ。
普通の人は負ける。
というか自身の弱点で滅びる。
あるいは、人は悪には勝てないようにできている。
弱点突き芸人というのは悪だ。そしてそれは悪ゆえに人を魅了する。
もし、戦うなら戦略は逆の構図を採らないといけない。
悪のターゲットは己の中にあるのだと知ること。しかし、克己というだけではなく、その弱点は弱点として認めるように自己を解体していくか、あるいは自分の弱みを認めて逃げた方がいい。
悪から引き下がるとき、ようやく悪が、その人を魅了していた理由がわかるようになる。
簡単に言えば、誰かがあなたを罵倒したなら、あなたは彼/彼女が享受できない幸運を得ていたということだ。それは愚かしくも幸運であったということかもしれないのだから、その愚かしさの支払いをしないといけないのかもしれない。
そして、そこで立ち止まる。
あるいは、そこで立ち去る。
それ以上のことは、たぶん、人にできることではないのではないか。