山形月報に泣く

 ⇒2006.10.25

評論方面では、安田理央雨宮まみエロの敵』(翔泳社)が非常におもしろい。これは、エロ雑誌やアダルトビデオといったエロ市場がいまジリ貧なのは何のせいなのかを、詳細な歴史とともに分析した結構まじな本だけれど、ぼくみたいな年寄りは、かつての涙ぐましいエロ規制を懐かしく思いおこさせるノスタルジックな本にもなっている。ああ、あったあった、マジックの墨塗りをマーガリンで溶かせるというのにみんな騙されたよねー、とか、一時はヘアがちょっと見えただけで大騒ぎだったのにねー、とか。そして全巻通じて、エロの敵はエロそのものであり、それがなまじ市民権を得てしまったのがいけないのでは、と述べる。大島渚なら、エロの敵は権力だとか思うだろうけれど、むしろかつてはそれがあったからこそエロの価値が高かったのだ、というのは実にうなずける。が、ではどうすればいいのかね。いろいろ考えさせられるよい本になってます。

 年寄りを泣かせる文章……(マーガリンではダメだった、たしかに)。
 「大島渚なら」のところでは、ふと、小山明子が以前、大島はベッドの上でもとても情熱的なのよといってむふっと笑ったところに、大人ってやだなと思ったことを思い出した。