と的場が言う

 ⇒【FT】陽も息子もまた昇る 長州から安保そして安倍家二代 (3) (フィナンシャル・タイムズ) - goo ニュース

 地元よりも国が優先するという考えは、日本のどこよりも長州に深く流れているのかもしれない。安倍の政治思想と長州の歴史があまりにもピッタリ合致するので、筆者は現地に行ってみて安倍のルーツを探ることにした。
 訪れたのは、夏の盛り。台風一過の空には、きれぎれの雲がわずかに浮かんでいるばかり。早朝の涼しさが、本格的な暑さに追いやられようとしている、そんな時に到着した。同行してもらうのは、安倍の友人で選挙活動を支えている的場順三。事務方として長年、政治の裏側から影響力を発揮してきた人物ならではの自信をたたえている。穏やかな外見の的場は71歳だが、実年齢よりははるかに若い体格と体力の持ち主だ。田んぼの間を縫って車を走らせ、蝉時雨の響き渡る山間に入っていく間、的場は私に歴史の講義をしてくれた。

 私たちは、ほこりっぽい庭に囲まれた松下村塾の跡を訪れる。わずか数畳ほどの幅しかないこんなに小さな木造の建物が、日本の歴史にどれほど大きな影響を与えたか、にわかには理解しにくい。同じ敷地内には小さな蝋人形館があり、松陰が弟子たちに講義する場面などが再現されている。そのほか、山口出身の総理大臣7人の蝋人形も並んでいる。着物姿の岸信介や、紺色のピンストライプスーツでこわばった様子の佐藤栄作もいる。「もうすぐ8人目が並ぶよ」と的場が言う。