そんなことはないんですよ

 ⇒保坂展人のどこどこ日記:愛国心は燃焼しだしたら止められない

子どもたちの内面は教育という場でいかようにも変わる。「いつ行っても批判されますから今日が適切だと判断した」と語る総理に、中国・韓国の要求をはねつけてエライと拍手する「大人」が少なからずいる。かれらの多くは教育基本法のもとで育った戦後世代である。十分すぎるほどの「愛国心」ではないか。そこに、プログラム化された愛国心教育を受けた子どもが若者となって加わる。

 つまり、子供たちはタブララサ(白紙)だから、保坂展人が考えるところの正しい教育を実施すれば正しい子供になる……そんなことはないんですよ。
 そんなことはないんですよが人間のありかたとして理解されないと、その「正しくない子供」を思想矯正しようということになる。これがソフトスターリニズムっていうものです。
 社会の変化や理念(たとえば反戦にしても男女平等にしても)などは、大衆の無意識の成熟というか変性に依存する。そして大衆の無意識というのは、まさに大衆の生活実感のなかで育成される。子供はどんなに偉そうなことをいう親でも、うちの親欺瞞だなぁと感じるし、逆にどんな無知な親でも、うちの親偉いなと感じる。その感じ方のなかに生き様が反映されるし、友愛の萌芽となる。その友愛の共同性がある水準に達するとき世界が変性する。

かつての戦争は、敗戦直前まで「やがて神風が吹いて神国日本が勝つ」と信じていた大人が大多数だった。「教育勅語軍国主義教育」の成果である。「この戦争に勝目はない」と冷静で客観的な認識を示すことすら「非国民」と糾弾される社会だった。戦後の自民党政権は「軽武装・経済成長」を掲げてひた走った。日本国憲法の平和主義と国民主権も社会に根を降ろしたようでいて浅かった。だから小泉ブームが起きて、安倍人気が上滑りする。

 それって戦後の神話だと思いますよ。山本夏彦でもまず読まれるとよいと思う。

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誰か「戦前」を知らないか―夏彦迷惑問答: 山本 夏彦
 庶民が「教育勅語軍国主義教育」をどう感じていたかは山本七平の「昭和東京ものがたり」を読まれるといいと思う。
 ↓に収録されている。
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静かなる細き声: 山本 七平