亀甲様曰く、普通の医師が解剖したと

 ⇒きっこのブログ: 担当医の証言

あたしは、この担当医の説明を読んで、愕然とした。「沖縄県には監察医が1人もいない」と言う説明には、言葉も出なくなった。今まで、警察の発表も、テレビや新聞などの報道も、すべては、「専門の医師による正式な行政解剖が行なわれ、その結果、自殺と断定された」って言うような内容だった。だけど、野口さんの遺体を解剖したのは、司法解剖行政解剖を専門にしている監察医じゃなくて、普通の医師だったのだ。そして、正式な行政解剖じゃなくて、「準行政解剖」だったのだ。

 ⇒死体取扱に関する諸問題の解決へむけての一考察  岩瀬 博太郎(千葉大学法医学教室)  北口 雅章(弁護士・名古屋弁護士会所属

2. 医務院制度の無い地域での検視をめぐる問題
 東京都や大阪市など5つの都市には、死体解剖保存法第8条に基づいて、多くは地方自治体の費用負担の下に監察医制度(「医務院制度」ともいう)が採用されている。これら医務院制度のある地域では、変死体が発見されれば監察医による検案が行われ、検案時に外表面のみの目視・検査だけでは死因不明とされても、行政解剖によって比較的慎重に死因の究明を行うことができる。しかし、監察医制度のない日本全国殆どの地域においては、医師が警察から変死体の発見現場に呼び出され、外表検査をしても死因不明と判断した場合、さらに「綿密に」死因調査をすべくCT検査や解剖を依頼しようにも実はできない仕組みになっている。まず、CT検査等の“お金のかかる検査”をしようにも、お金は誰にも払ってもらえない。また、司法解剖ではないので、解剖実施を認める法令上の根拠がなく、従ってその経費負担者も存在しないことになるからである。
 但し、ごく例外的に、県費をもとに準行政解剖(承諾解剖)が実施される場合はある。しかしながら、この準行政解剖は,死体解剖保存法第1条にいう「公衆衛生の向上を図るとともに、医学(歯学を含む。以下同じ。)の教育又は研究に資する」ための解剖で、その法的位置付けは、各病院において自主的に行われる病理解剖の法的位置付けと全く同様である。即ち、準行政解剖の最大の問題点は、病理解剖と同様、費用負担者に関する法規定が存在しないことである。現在、殆どの地方自治体は財政困難に陥っており、法的な根拠無く地方自治体の財政で解剖費をまかなわせるというのは非現実的である。

 ⇒野口氏怪死事件について

 司法解剖は、犯罪の疑いが拭いきれない死体に関して行う解剖で、検視官が主体となって捜査を行い、解剖中の警察官の立会いも多く、また写真撮影も多く行われ、他の解剖に比べれば格段に証拠保全をする解剖と言える。(とはいえ問題も多いのだか、、、)司法解剖では遺族の承諾は不要である。
 一方で承諾解剖とは、死体解剖保存法第7条で行われる解剖で、遺族の承諾のもとで行われる解剖である。承諾解剖は、非犯罪死と判断された遺体を、公衆衛生の維持や研究・教育で解剖するものである。地域差はあるが、警察官の立会いは極めて少ないし、写真も撮ったり撮らなかったり。鑑定書も原則書かれない。そういう意味では、証拠保全としては承諾解剖は行うべきではない。
 日本では自殺者を司法解剖できないとした法律はないのだが、東京の行政解剖の影響もあってか、自殺者を司法解剖できないと思って運営している警察官が殆どのようで、それが野口氏を承諾解剖に回した最大の原因になっているのだろう。つまりは、日ごろから初動段階で自殺と決め込んだものを司法解剖しない風潮が今回出てきてしまっただけでもある。