改革の私的FAQ ver1.1

1 日本を今改革すべきだと考えるのはなぜですか?

 基本的にはこの問題は経済の問題ではありません。日本の政治風土の問題です。
 この問題は海外からの視点のほうがクリアに見えるでしょう。海外の視点の代表として、フィナンシャルタイムズ”http://news.ft.com/cms/s/8b1ded66-0a04-11da-b870-00000e2511c8.html”(参照)では、次のように、この改革を経済の問題ではなく、民主主義の問題として提起しています。たしかに、今回の選挙で反改革派が強い力をもてば、日本の民衆は政治改革というものの可能性を見失うことでしょう。

This would hand victory to the anti-reform rebels and thereby entrench the depressing lesson that a reform-minded programme with a clear-cut ideological stance is an electoral liability in Japanese politics. Japan's democracy, not to mention its economy, would emerge impoverished.

 またこの点について、かつて小泉が登場したとき、その失望を次のように表現した、日本学者ウォルフレンの「ウォルフレン教授のやさしい日本経済(カレル・ヴァン ウォルフレン)」(参照)の示唆も参考になるでしょう。

小泉首相は、彼が首相になってから何カ月もの間、多くの人が期待していたことを、実現できていません。しかし、それは彼のせいではありません。これは日本の政治経済の仕組みから来ている問題なのです。

 今この改革を実施しなければ、今後も以前のように国のリーダーシップがとれない状況が続くでしょう。
 リーダーシップが政治で確立しなければ、郵政民営化と限らず、いかなる経済政策も政治のコントロール下で行うことはできません(密室の操作で行うことは可能かもしれませんが、それは民主主義でしょうか)。
 では、なぜ、小泉は今になってそのリーダーシップの確立を目指したのでしょうか。これは、自民党内の権力抗争プロセスの結果です。
 

2 郵政民営化は諸外国と比べてどういう位置づけになりますか?

 この問題で重要なことは、郵政民営化というとき郵便事業を当面の問題から外すことです。実際、政府案では、郵便事業ユニバーサルサービス(国家のどこでも同じサービスを保証する)という国際的な制約を守るために、実質は民営化を行っていません。株式は三分の一を国家が保有し、最大の株主となり、ユニバーサルサービスを保証します。
 問題は、郵貯簡保の民営化です。この実態は、銀行業と保険業です。これらの業務が金融管轄の行政で一元化されていない先進民主主義国はありません。現状のままであれば、三五〇兆円という巨額の国富が総務省管轄になります。この日本の状態を他の先進民主主義国では、日本政府の子豚の貯金箱(a giant piggy bank)と呼んでいます。
 また、巨大な銀行業と保険業が民間に移行しないということは、日本において正常な形での銀行業務と保険業務が今後も成長を阻まれるということも意味します。それがもたらすものは国の停滞です。
 なお、米国のFannie Mae及びFreddie Macはどうか、その資産規模では巨額ではないかという反論もあるかもしれませんが、これらは基本的に銀行業や保険業ではありませんし、しかし隣接的な機能もあり、それゆえに米国でも問題となってます。

履歴

 1.1 フィナンシャルタイムズの引用部分の間違いを修正しました。