はてなQ  「徒然草」の現代語訳で、安価&内容のしっかりとしているものを教えてください。

 岩波文庫ではだめか?
 個人的には講談社文庫のがよいと思うのだが、今は絶版だろう。
 「徒然草」程度の時代の言葉なら、きちんと日本語にふれあっていくと、40歳ごろ、普通の言葉のように読めはじめると思う。というか、我ながら、古語が自分の言語の延長に自然に訪れるときがあって、驚いたものだ。
 そうなってから読んでもいいとは思う。

八 つになりし年、父に問ひて云はく、「仏は如何なるものにか候ふらん」と云ふ。父が云はく、「仏には、人の成りたるなり」と。また問ふ、「人は何として仏には成り候ふやらん」と。父また、「仏の教によりて成るなり」と答ふ。また問ふ、「教へ候ひける仏をば、何が教へ候ひける」と。また答ふ、「それもまた、先の仏の教によりて成り給ふなり」と。また問ふ、「その教へ始め候ひける、第一の仏は、如何なる仏にか候ひける」と云ふ時、父、「空よりや降りけん。土よりや湧きけん」と言ひて笑ふ。「問ひ詰められて、え答へずなり侍りつ」と、諸人に語りて興じき。

 普通は人の世の順序として父が先に死ぬ。父に死なれて、人は、父というものを知る。どう知るかはあまりに多様なのが人生というものだ。
 そして父に死なれて、この法師の言うことを聞くと、たぶん、だれもが静かに涙すると思う。
 また、若いときには気が付かないと思うが、八歳の子の父というのはまだ若いものだ。
 古語の音読などくだらないとは思うが、この程度の言葉なら、百回音読すれば意味は自然にわかる。そして、この古典を書写して今に伝ふることの学恩を思うべし、この名文は百回読むに耐える。