平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学
平気でうそをつく人たち―虚偽と邪悪の心理学 M.スコット ペック 他 |
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販売:草思社 |
これは、精神分析学が「悪」の領域に立ち入ろうとした、奇妙な本だ。学術書ではないし、精神分析学的な発展もしていない。しかし、この「悪」の問題はとてもつもなく奇妙に心に残ると思う、というか、ある程度まで心を見てきた人間なら。
こう言うのは躊躇うものがあるが、「夜ごとの揺り篭、舟、あるいは戦場」はその結果としては「悪」の作品でもあると思う。
そして、ちょっと一連の話の振り出しに戻るのだが、アイ’ムホームでは、悪は間接的にしか出てこなかった。表層的には、家路久(いえじ・ひさし)…時任三郎の過去の生き様が人を傷つける悪ではある。が、これは「悪」ではない。むしろ、悪は清原カオル…紺野美沙子に潜んでいる。と、いう言い方は拙いが。彼女は、許すことができないという心=悪、で、生きていた。
おそらく、アイ’ムホームには隠れた悪の物語が女の物語として複数隠されているとは思うが脚本家も自覚的ではないだろうし、まして、原作の石坂啓は、どうでもいいだろう。