スーダン・ダルフール危機=白戸圭一(ヨハネスブルク)

 率直にいうと醜い論説だなと思う。

 だが当時、世界の目はイラクに向いていた。凄惨(せいさん)な実態が注目され始めたのは、丸1年後の今春である。いまスーダン政府は、国際機関の人道支援に不承ながらも協力している。それを見ていると「国際社会の強い関心、注視があれば被害を小さくできたのではないか」と反省するとともに、どんなに人権感覚の欠如した政府も、世界の目は意識せざるを得ないことを改めて感じる。

 毎日新聞は今春なにをしていた?

 ダルフールで軍関係者がひそかに取材に応じ、軍が民兵を組織した経緯について話してくれた。それによると、昨年4月25日、反政府勢力が北ダルフール州の州都を総攻撃し、軍や警察が壊滅的被害を受け、軍は態勢立て直しのため民兵の組織化に着手したという。これが「世界最悪の人道危機」の始まりだった。

 これは論理飛躍だと思う。というのは反政府勢力の反乱はあった。それに政府側も応戦しなければならなかった。それには民兵導入が必要だった、と、そこまではいい。そこから、どうして住民への虐殺への始まりになるというのだ。
 というか、話はそこで隠蔽されているのではないか。私はこの事態は米国同様というわけではないが、特定人種の消滅を計るジェノサイドだと思う。被害者が特定されすぎている。そのことと、反乱軍応戦とはつながらない。