鉄人28号 最終回 罪と罰

 感動した、というと、小泉みたいで浅薄な感じだが、感動した。ある意味では、予想外だった。もっと、ロボットアクションで締めるのかと思った。しかし、これは、自分が思っていたより遙かに深い作品だった。なにより、この作品は、悲劇として成立していることに驚いた。メディアと商業ベースの作品で悲劇を描くことが可能なのかとすら思い描いたことはなかった。
 予想外といえば、村雨の行動とその叙述もだった。なるほど、そうだ。こういうといらぬ誤解を招くが、我々は村雨のように戦後に呪縛されていた。正太郎の言うように、さあ、戦おう、という意志が消えていたわけではない。それこそが鉄人28号のように赤く黒く日本に眠っている。(村雨の蘇りはエピローグの部類だ。生きている必要性はないが、そこで殺せば全体のメッセージのバランスが悪くなる。)
 ビッグファイアーの描き方もよかった。ただの陰謀の悪人ではない。なぜ日本が勝てるのにそうしなかったのか。そしてその勝利性を戦後に持ち込んだのだ。つまり、冷戦の本質そのものである。それこそが、ゆるすまじき、なのだ。
 鉄人28号の死は、両義的だった。彼が最後に意志を持つだろうことは昔のジャイアントロボで想像できた。鉄人28号は最後に明確な意志を持ったのか? つまり、正太郎を殺そうとしたのか? あの表情がすべてだ。その了解では殺意はない。むしろ、憐れみの映像だった。すごいな。あそこで鉄人28号が善なる意志をもって正太郎を守ろうという線にしているのかと思ったのだが、そう読むべきではないだろう。
 完全な作品だった。こんな作品がまだ創作し得ることに、自分の抱えるニヒリズムがちっぽけなものに思える。
追記同日
 あれから3回見たが、鉄人28号の最期は正太郎を守ろうとしていると見てもいいだろうと思った。