武村政春「世界は複製でできている」、読んだ。

 この著者⇒[書評]新しいウイルス入門(武村政春): 極東ブログ
 こちらの本はより生命論的というか哲学的。複製とはなにかという議論。
 だが、吉田夏彦を引いてはいるが、それほど哲学的な深まりはあまり感じられず、生物学の話と常識的な部分からの思弁の延長といった印象があった。

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世界は複製でできている ~共通性から生まれる多様性 (tanQブックス)
 性の登場や多細胞への進化で、ここはなぜマーギュリスが出てこないのだろうかと不思議に思えた。
 という点で、隔靴掻痒という印象が残った。
 反論ということではないのだが、おそらく、生命現象は複製化というキーワードではうまく表現できないのではないだろうか。
 複製というよりはJavaなんかのclassのnewコンストラクタみたいなもので、そういうイメージのほうがわかりやすいだろう。
 また、複製は原理性にはあっても、結果としての複製は多様化するのだが、これはオリジナルとの退避というより、より環境適合へのエピジェネティクスの結果だろうし、また、そのなかでよりセマンティックスに近いコンヴァージェンスはあるだろう。
 むしろ、コンヴァージェンスでまとめられなかっただろうか。そのあたりは、異端的に見られる危険域なのだろうか。