そういえば、『生命起源の科学哲学』を読んだ。

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生命起源論の科学哲学―― 創発か、還元的説明か
 創発論はくだらないというのはそのとおりなのだが、では還元論で説明できるかというと、説明できませんということを述べて、将来的には還元論で説明できるだろうとしているのだが、それって循環論でナンセンスであり、結局、これは著者の意図に反して、創発論が払拭できないという説明になってしまったように思われる。
 数理モデルについては条件設定としてこの手法でよいと思うのだが、数理モデルのモデル性というか、限定性がよくわからない。これだとNFLTの数学モデルで逆のことが言えそうな気もしないではない。まあ、それも否定はされているみたいだが。
 大著のわりにモノーからさして進歩してない印象。この手の主張は、フランスの思想界において最初から決まった結論があるのではないか。
 あと、フランスの文脈にありながらベルクソンの扱いが粗雑で、単純な生気論にしていた。ちょっとこれはなあ。
 このあたりこの本の評価が哲学の文脈でどう捉えられるのか、いぶかしかった。ちなみに日本だと澤瀉久敬の関連。
 書籍としては、訳者が巻末にサマリーを付けているので、一般人はそれだけ読んでもいいような印象はあった。