終風日報編集後記 ブータン王国が隣国から学んだこと

 ブータン国王の婚礼で話題の中心は王妃となるジェツン・ペマさん(21)だろう。たいそうな美人である。王様もイケメンではあるが。▼ブータンで私の世代が思うのは切手である。変わり種の切手が多かった。外貨収入のためもあって奇抜なデザインとしたのだろう。貧しい国だった。今でもそうだと言えるのだろうが、物質的な豊かさではなく、心の充実「国民総幸福量(GNH)」を国政の指針としているということで、日本でも支持者が多い。日本の着物に似た民族衣装を守っていることも懐古的な感傷になるのだろう。▼ブータンでは今回の王妃も民間から採ったように民主化が進んでいる。が、最近ではどうか知らないが、ブータン国民は民族衣装着用を義務づける法律があった。「伝統的な価値と礼儀作法を守る運動」もあった。ナショナリズムである。当然、排外主義でもある。かつては人口の三割にも達したネパール人を追い出す政策でもあった。▼ブータン王国に隣接する、紅茶好きならよく知っているシッキム――今回地震の被害にもあった地域だが、ここにはシッキム王国があった。滅んだ。ネパール人が流入してインドが併合したからであった。ブータン王国は隣国の滅亡から排外主義を学んだのある。▼私は思うのだ。ブータンのようにすれば「国民総幸福量」は上がるものなのではないか。いや日本こそ「国民総幸福量」を上げるために排外主義を採っているのではないか。▼アニメクリエイターの宮崎駿氏は 「僕はね、常に不機嫌でいたい人間なんです」と言っていた。密かにそれはいいなと思う。国民総幸福量なんてものを賛美する人間には不機嫌でいたいし、排外主義者をネットで探してはバッシングすることで上機嫌になるような輩にも不機嫌でいたい。