終風日報編集後記 キリスト教書店巡り

 電子出版枠に「キリスト教電子書籍ならホープ・イーブックス」というリンクがあった。私が聖書学を学んでいた頃の古い書籍が電子ブックになっていたら、という思いからリンクを開くと、福音派の新しいものが多いようだった。▼私事になる。若い頃なぜ聖書学を学んでいたのだろうと問うと今の自分にはうまく答えられない。不思議な気持ちすらする。学ぶにあたってはまず図書館を使う。たいていはそれで足りる。ミシュナを借りたとき、自分の前に借りた人の名前に田川建三とあるのに驚いたこともあった。佐伯好郎先生が寄贈された蔵書を順繰りに辿りながら晩年の思想を追ったりもした。図書館で足りない分や手持ちに欲しいと思った本は教文館に足を運んだ。それから銀ブラしてシェーキーズでたらふく食って、プランタンで食材を買った。岡田英弘先生が若い奥様と闊歩している姿も見かけた。▼四谷のエンデルレ書店にも足を運んだ。荻窪の待晨堂にもよく行った。古びた不思議な本もいろいろ見かけたりもした。書店は不思議な世界への通路でもあった。▼インターネットの時代になると、各種の情報は比較的容易に入手できるようになったが、かつて書店巡りをして探した、心躍るような知識にはあまり出会えない。暗い書店に騒然と並ぶ要塞のようなものはそこにはない。あの向こうにしか本当の知識はないのだろうと目をつぶって思うと、じんと染みるような感覚がある。