終風日報編集後記 通貨発行益で財再再建はできないが

 機械的に取り上げたものだが、トップに上がっている「「政府紙幣発行で財政再建可能」のウソ」が微妙な記事だった。買いオペをした分売りオペが待っているので中期的には効果が打ち消しになるという議論はもっともだが、そこだけを強調してもあまり意味はない。「流動性の罠からの脱出の際」というレトリックの空論に聞こえる。▼「流動性の罠を脱出すれば、同時に通常の貨幣需要側の制約が復活するので、高いインフレの発生を回避するために、中央銀行保有国債を売却し、実質貨幣残高を減少させる必要が生じる」というのは高インフレ発生抑えるのであれば当然のことで、むしろその高いインフレを起こす前の制御が先に問われている。なにも通貨発行益を国がせしめることが目的ではない。▼「最近では、政府紙幣の発行で財政再建ができると主張する者もいる」というのは疑似問題にしか見えない。実質金利を下げ投資を促し税制を機能させることが課題だからだ。▼「狸の札に惑わされることなく、増税や歳出削減により地道に財政再建を進めることが求められる」という結語が狸の札になっているのが日本の現状である。