日経新聞社説 電力供給力とコストの情報を開示せよ : 電力供給力とコストの情報を開示せよ  :日本経済新聞

 電力会社が公表しない電源、いわゆる「埋蔵電力」について臆測が生まれるのも情報が足りないからだ。
 将来のエネルギーを国民が考えるうえで必要なデータも足りない。福島第1原発事故を経て、今後も原子力を利用し続けるのか。再生可能エネルギーをどこまで増やせるのか。長期のエネルギー供給を議論する際に不可欠なのが、1キロワット時の電力を生み出すのにかかる電源コストだ。
 現在、よく引用される政府の試算は原子力発電のコストを5〜6円とする。2004年に資源エネルギー庁の審議会に提出された数値だ。火力7〜8円、水力8〜13円に比べ、原子力は経済性があるとし、原子力発電と核燃料サイクル政策を継続する政策判断の根拠となった。
 その後7年で、原油やウランの価格、原発稼働率など計算の前提となる条件が変わった。使用済み核燃料のリサイクルや廃炉などの費用も原子力発電のコストに計上されてはいるが、原子力に都合よく計算され、実態はもっと高いとの批判が当時からあった。
 福島事故後は原発の安全性を高めるため、廃炉や除染などに巨額の費用がかかるのは避けがたいが、こうした前提に立つ数値も早く示す必要がある。

 化石燃料を使う場合は温暖化のためのコストも計上のこと。