朝日社説 経済対策―急場しのぎではだめだ

 もともと財源は麻生政権下の第1次補正予算の一部を凍結して捻出(ねんしゅつ)した2.7兆円が想定されていた。
 それが、デフレや円高による景気の「二番底」への懸念を背に、国民新党亀井静香代表による規模拡大要求でもめたあげく、財政支出額は7.2兆円に膨らんだ。

 総額からいえばそして結果論から言えば需給ギャップもありしかたがないかともいえるが、これ直前まで決まらず亀井大臣のごり押しを鳩の一声でエイと決めてしまっただけの話だ。4.5兆円の額が、民主党内合意もマニフェストもへったくれもなく、瞬時に決まった。こんなのありなんだろうか。あの事業仕分けの馬鹿騒ぎの9倍ものカネだよ。そういえば、アフガン小切手外交の時も総額が闇の中でエイと決まった。

 鳩山内閣は1次補正見直しや事業仕分けを通じて不要不急の公共事業を凍結してきた。その一方で電柱、電線の地中化や街路緑化のような不急の公共事業に予算をつけるというのだ。これは明らかに矛盾したやり方だ。
 1990年代以降の自民党の政権下で公共事業中心の経済対策が乱発されたことが借金財政をもたらし、その後の社会保障予算の抑制につながった。それを教訓に、やり方を変えようというのが「生活が第一」「コンクリートから人へ」を掲げた鳩山政権のめざしたものだったのではないか。
 失業を増やさないために雇用調整助成金の要件を緩和することや、新卒者の就職、企業の資金繰り対策などを盛り込んだことは意義がある。

 これは路線的は麻生政権路線の復活とも言えるもので、やっぱり政権交代なんかなんの意味もなかったと民主党が認めるようなものだった。
 ⇒クローズアップ2009:7.2兆円経済対策 「前政権継承」ズラリ - 毎日jp(毎日新聞)

 政府が8日決定した総額7・2兆円の経済対策は、円高やデフレによる景気悪化への懸念が高まる中、雇用対策などのセーフティーネット(安全網)拡充に重点が置かれた。市場では「二番底の回避策にはなる」との評価も受けている。それでも、麻生政権からの継続事業が目立つ上、国民新党に押され、地方向けの公共事業も追加された。その結果、「コンクリートから人へ」という鳩山カラーは薄められた。

 だが、目玉施策の中には、省エネ家電のエコポイント制度やエコカー補助金など、麻生政権が創設した景気対策の「焼き直し」も目立った。
 さらに、今回の経済対策について政府は当初、「公共事業とハコモノ」は対象としないとしていたにもかかわらず、地方の公共事業を支援する交付金として5000億円を計上。1次補正の見直しで執行停止した公共事業約4800億円分が、ほぼそのまま復活した。
 藤井氏は「従来型とは違う」とするが、公共事業復活に対しては閣内からも8日、「経済対策として(公共事業を)設定するのは、古いのかなという感想は持っている」(仙谷由人行政刷新担当相)との疑問の声が上がった。

 実際に鳩山さん素直に認めている⇒asahi.com(朝日新聞社):菅VS.亀井「しこり残りません」 8日の鳩山首相 - 政治

これはあの、リーマンショックからきていますからね。それまで私ども野党時代を通じて、経済対策をもっと早く打てば良かったのにな、という思いがあります。それだけに、ここまで深刻になってしまったことは、残念なことではありますけども、しかし経済をある意味では、しっかりと立て直していかなければならんということで、補正を組んだ前政権の考え方も分からんわけではない。

 これで普天間飛行場が県外移設できなければ、この政権交代の意義は皆無でしょう。マニフェストのごたくも今回赤字国債で見事にふっとんだはず。
 たぶん普天間も終わっている⇒普天間作業部会 協議を停止 このまま終了の可能性 : 週間ニュース : 九州発 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題で、政府は、移設先をめぐる検証機関として日米間に設置した外務・防衛当局の閣僚級作業部会の協議を停止した。岡田外相が8日の記者会見で発表した。米側は、来年の日米安全保障条約改定50周年に向けて「日米同盟の深化」を目指す協議についても延期を日本側に通告したばかりだが、普天間協議の停止まで決まったことは、両政府間の亀裂が一段と深まったことを示すといえそうだ。

 ⇒asahi.com(朝日新聞社):日米普天間協議中断へ 決着先送りなら米「合意壊れる」 - 2009政権交代

 岡田克也外相は8日、米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の移設問題を協議する日米閣僚級の作業部会が、当面中断されるとの考えを示した。4日に開かれた前回の作業部会では米側が、このままでは日米首脳が11月に合意した同盟深化のための「協議のプロセス」が進まなくなるとの懸念を表明。普天間問題の影響が日米関係全体に広がり始めた。

 日米首脳会議も無理そう⇒東京新聞:普天間問題『首脳会談は困難』 外相日米同盟協議も先送り:政治(TOKYO Web)

 米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)移設問題の長期化が、日米同盟関係そのものに影響を及ぼし始めた。鳩山首相が意欲を示す十八日のオバマ大統領との首脳会談は実現の可能性は低く、首脳同士で解決の糸口を探る機会すら失いかねない状況だ。首相が提唱した日米同盟深化の協議も早期の開始が困難になった。

 朝日の社説に戻して。

 そういう工夫が乏しかったのは、たんに政権発足から時間がないためというより、中長期の成長戦略や総合デフレ対策を持たず、負担と受益のあり方などを幅広く討議する場もないことが大きな要因だろう。
 来年度予算編成に課せられた重い宿題である。

 それが選挙前から指摘されていたことだった。