『日はまた沈む』

 ビル・エモット曰く⇒ビル・エモット 特別インタビュー第二弾 「鳩山政権の経済運営は予想以上に酷い」

 特に後者の郵政民営化は、国際社会からも日本の改革の象徴と見なされていただけに、かくも安易な180度の方向転換はいただけない。英米でも、かつての小泉自民党政権への意趣返しに過ぎないと報じられている。実際、私も、あまりの急転換に唖然とした。とても事前にこの問題について真剣な検討があったとも、先行きについて確固たる成算があるとも思えないからだ。

 但し、事業の必要性を見極める際になにより重要なことは、ビジョンであり指導力だ。残念ながら、現在の鳩山内閣からはそれが伝わってこない。何も夢のような成長戦略を提示しろと言っているわけではないが、それにしても、大掃除をした後にどうしたいのかが見えなさすぎる。これでは、事業仕分けが果たして正しく行われるのかどうか不安視されても仕方ないだろう。

 また、ここ数年言い続けていることだが、保護され恵まれた正社員という労働者グループと劣悪な環境に置かれた非正規社員という未保護労働者グループに分かれてしまっている労働者市場の二層構造を早く解消することだ。これは、社会正義の実現のためであることはもちろん、内需活性化という点からも非常に有効な改革だ。

 今の日本では、構造改革あるいは改革という言葉は、格差拡大を連想させ、忌避される言葉なのかもしれないが、それは日本にとって不幸な話だ。社会正義の観点から失業者や低賃金労働者に対して安全網をより効果的に整備し、福祉を立て直すことは、規制緩和や撤廃と両立可能だ。そこを誤解している議論が、世界景気の悪化の影響を受け始めた以降の日本には多すぎる気がする。

 民主党政権の現在のマクロ経済運営は、残念ながら、予想以上に酷いと言わざるを得ない。

―あなたは小泉政権下の2006年1月に日本経済の復活を予測した『日はまた昇る』(草思社)を上梓したが、今も日本は復活できると信じているか。
 まず率直に言って、あの題名がやや時期尚早だったことは認める。

 『日はまた沈む』