仮面ライダー龍騎のこと

 ⇒城戸真司考 - 萬の季節

真司は事実すべての戦いを止めて誰も死なないようにする、と言いだす。

 これは平成仮面ライダーの当初からの制作側のオブセッションで、つまり、善と悪の対立という構図を作らない、また、ヒーローを作らないという、この二点が、すごーくまずく結集した作品。
 とりあえず、このテーマがそれなりにまとまったのがキバ。で、事実上、平成仮面ライダーは終わってしまった。
 龍騎の最終回は単なる破綻だと思うけど、城戸真司演じる仮面ライダーが最終回前に死んじゃうのはよかったといえばよかった。というか、こんなもの子どもに見せるなよだけど。

そして真司は言う「今、俺、分かったような気がする。やっぱり戦いを止めたい。」
いやいや、分かったじゃなくて・・・

 そこはキバでも繰り返したけど、ビルドゥングスの問題で、「世界」の問題ではない。のだけど、曖昧は曖昧かな。このテーマは555で主人公が実はオルフェノクで、しかもオルフェノクが「虐げられた民族」だったというテーマのほうが面白い。ただ、テーマ系列が違うけど。
 龍騎で結果的によかったのは、各人の個別化した希望が世界の前に打ち砕かれていくところかな。宮台先生の終わりなき日常を生きるとああなるよという結末がシビアに出ていた。つうかそれってホッブス以前だろ。
 あと、テーマとしては、文学的に言うなら、「鏡」の問題があると思う。お子様向けのアナザワールド仕立てのわりに、オーディン自体が鏡像だったわけだね。人は鏡像と戦っているというのは、つまりは、ファルスのいない世界の残虐さということかもしれない。その意味では、ファルス獲得の戯画が悲劇をもたらすということかも。