日経春秋 春秋(8/13)

 納豆があるかと思えば赤飯もある。モチ米を炒(い)って固めた雷おこしも売っているし琵琶湖名産の鮒(ふな)ずしの類(たぐい)も……。どこかの物産展の話ではない。写真家の森枝卓士さんが「東南アジア食紀行」でつづるミャンマーの山村の市場風景だ。▼「とにかく、次から次と日本を思い出させるものが登場する」と森枝さんは驚いている。どうやらかの国には日本文化のルーツのひとつが潜んでいるのだろう。人々の風貌(ふうぼう)もまた私たちと似通っていて親近感を覚えるのだが、ならばこそ、20年も続く軍事政権の暴挙愚挙の繰り返しには怒りと悲しみが募ってくる。

 なんかイヤミを言うようだけど、「私たちと似通っていて親近感を覚えるのだが、ならばこそ」って書く心理が私にはわからない。というか、そういう心理があるとき、理性で警戒すべき、こうするっと書くなよと思う。
 私たちに似ても似つかず親近感も覚えないとしても、そこに人間の悲惨があるなら、人間として似ているがゆえに怒りと悲しみを感じる……そういう心は誰もあるはずなので、その心まで降りてみることが大切だと思う。