読売社説 盧武鉉前大統領 疑惑の中での尋常ならざる死 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 検察当局は前大統領の死を受けて捜査の打ち切りを決め、盧武鉉氏にかけられた疑惑の全容は解明されずに終わることになった。
 だが、どうにも説明のつかない不明朗な巨額のカネを家族が受け取った事実は残る。
 人権派の弁護士で能弁家で知られた盧武鉉氏も、家族の罪状までは弁解のしようがなかったろう。面目なさと後ろめたさにさいなまれ、精神的に相当追い込まれていたのかもしれない。

 親族の問題はつきまとうものだ。むしろそことの決別ができなかったのだろう。とはいうもののそういう視点も死者に鞭打つようで後味が悪い。

 盧武鉉氏の悲劇は、韓国の“政治文化”の所産とも言える。
 大統領に強大な権力が集中するシステムのもと、私利私欲を求める勢力が地縁血縁を利用して大統領周辺に近づき、家族、側近たちもカネまみれになる醜態が、歴代政権で繰り返されてきた。
 清廉潔白を標榜(ひょうぼう)した左派政権も例外ではなかった。
 こうした文化をどこまで是正できるかが、保守派の李明博政権には問われている。

 「文化」というより、政治システムというか一種の現前する制度の問題で、これはきれい事で断じてもどうなるものでもない。というか、きれい事がこのシステムの内部に機能している。きれい事の機能が盧元大統領を生んだのだからそのシステムの内部の問題だろうとも思う。