今日の一冊 「情事」森瑤子

 ⇒残間里江子さんの私の1冊「情事」森瑤子 | NHK 私の1冊 日本の100冊

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情事 (集英社文庫 143-A): 森 瑶子
 これは読んでいない。たぶん、森瑤子の小説は今後も読まないと思う。今回もこの番組で「情事」の朗読の一部を聞いたが、気持ちわるくてたまらなかった。
 残間里江子については名前しかしらない。
 ⇒残間里江子 - Wikipedia
 番組ではバーみたいなところで、飲み物を置いて語っていた。まあ、ありがちな演出。残間の話もまた、私は、団塊世代の女性にありがちなつまらないお話でしかなかった。私は基本的に、団塊世代の感性は受け付けない。
 森瑤子の小説は読まないだろうと書いたが、彼女の書いたものを読まないというわけではない。
 ⇒森瑤子 - Wikipedia
 逆で、たぶん、私は彼女のエッセイのほとんどを読んでいる。そして多くのことを学んだ。そのあたりはうまく言葉になってこない。その最大の理由は彼女の理不尽な死にある。
 彼女の最高の作品は、「夜ごとの揺り籠、舟、あるいは戦場」だと思う。絶版になっていてアマゾンの古書にもない。
 ⇒極東ブログ: [書評]「快楽 ― 更年期からの性を生きる」(工藤美代子)

 本書のなかである意味で文学的な陰影を感じたのは著者工藤美代子と晩年の森瑶子の交流だった。森瑶子についてウィキペディアに解説があるかと思ったらない。もう忘れられた作家なのだろうか。没年を見ると九三年。もう少し調べると七月六日。五十二歳だった。デビューは三五歳の「情事」(参照)。すばる文学賞で文壇デビューし、「誘惑」「傷」芥川賞候補となったが芥川賞は得ていない。
 私は森の小説のよい読者ではないがエッセイはよく読んだ。エッセイと言っていいのかわからないが、ユング派の精神分析を受けていく過程を描く「夜ごとの揺り籠、舟、あるいは戦場」には衝撃すら覚えた。同書はアマゾンにはない。一度文庫化されているので古書店で見つからないものでもないだろう。ネットを見ると復刊リクエスト(参照)があるがその価値がある。同書の刊行は八三年なので森が四二歳のことであっただろう。更年期にはまだ早いが心の中の葛藤はある極限に達していた。
 工藤の「快楽」から森瑤子に話がそれたが、私の印象では、「快楽」に描かれている、ある種強迫的ともいえるような中年以降の女性の性行動には森が直面していたような精神的な問題が関係しているだろう。同書も子細に読むと工藤もそうした直感を得てはいるようだ。が、雑誌連載でもあり、また彼女の資質からしてもこれ以上掘り下げられるものでもないだろう。

 森は52歳で死んだ。私は来年彼女の歳になる。人生とはなんなのだろうと絶叫したい思いに駆られる。