朝日社説 給油法案審議―「アフガン」を広い視野で : asahi.com(朝日新聞社):社説

 これはひどい社説だと思う。

 ビンラディン容疑者の行方は今も分からない。タリバーン勢力が盛り返し、国際治安支援部隊に参加する外国軍は守勢に立たされている。カルザイ政権の支配が及ぶのは全土の3割にも満たないといわれる。民間と軍の死傷者は急増し、日本人も犠牲になった。
 いまや米政府内にも、このままでは手に負えなくなるといった悲観論が渦巻いている。
 なぜ、こんなことになったのか、原因はいくつもあろう。米軍がイラク戦争で力をそがれ、手薄になった。ケシ栽培や麻薬密輸を根絶できず、タリバーン復活の資金源となった。政権の腐敗体質。米軍の空爆で民間人が多数巻き添えになり、民心が離反した……。

 アフガン戦は米国が主体ではなく、まがりなりにも国際社会が主体なのにいかにも米国が主体であるかのように誘導した議論だ。米国はこの戦争であまり前に出ないように配慮しているのが裏目に出た面がある。
 日本もこの戦争で被害を出したが、自己兵士を数多く死なせている国家がこの問題をどう考えているか朝日新聞は考えたことがあるのだろうか。カナダはNATOに怒っていた。NATOが機能していないことで自国民に被害が出たかのような。イギリスもNATOに怒っていた。おまえらがやらないならジョンブルの真価を出すという鼻息がテレグラフにはあった。もちろん、テレグラフであってガーディアンではないが。
 ではなぜNATOが機能しなかったのか。そこが多層に難しい問題を孕んでいる。中ロについてはこの問題を事実上傍観することで世界の足並みを崩した。アフガン問題はホルムズ海峡問題であることに日本が気が付くとき日本は終わっているかもしれない。

 ブッシュ政権は軍事力増強の方針に転じ、各国にも増派を要請している。だが、反応ははかばかしくない。治安改善のためにはアフガン国軍を強化するしかないとして、部隊を増派しない国や、部隊を派遣しない国にその費用の負担を求める案も浮上している。

 「案も浮上している」の主語は米国であるようにしか読めないし、米国にもその動向はあるにはあるが、米国だけがその思いを持っているわけではない。その世界の空気が読めないのだとしたら、日本のメディアとして失格だろう。
 オバマパキスタンに派兵する気でいる。アフガンについては微妙でよくわからないが、これはパキスタン側からアフガンに入る意味があるのに。朝日新聞オバマがその決断をする可能性をどう見ているだろうか。

 結局のところ「軍事力でタリバーンに勝利することはできない」(アフガン駐留の英軍司令官)というのが、国際社会が7年にしてたどりついた結論ではあるまいか。

 長期的にはそうだ。が、目下の状況がそうだというならそれは見上げた意見だ、と言いたいところが世界の悲観論のほうがそれを支持し、さらに混迷を深める可能性のほうが高い。
 なにより朝日のこのアフガン向けの論調がどうイラク戦と整合するのか、増派によって一時的な安定をしたイラクをあえて考慮からはずしている。

 では、どうするか。タリバーン穏健派との対話を探り、和平を結ぶことで国際テロ組織アルカイダを孤立させることだ。当初、対話に反対だったカルザイ大統領や米政府も、ようやくこの可能性に着目しだした。

 それが可能なのは「タリバーン穏健派」が可視になることだ。誰がそれをあぶりだし誰がその仕事に着手するのか。文脈ではしかし、米国頼みではないか。

 アフガン再建と国際テロの根絶に日本はどう貢献すればいいのか、この時期に国会で話し合うのは意味のあることだ。給油支援を続けるかどうかだけでなく、民主党の対案も俎上(そじょう)にのせて視野の広い論争をのぞみたい。

 「給油支援」は憲法問題がからむ。「民主党の対案」の意味を朝日新聞が理解しているとも思えない。小沢は日本から兵士出して国連軍に従属させろと言っている。それを朝日新聞が支持しているなら、それはそれでたいした見識だと思うが、レトリックで言葉を濁し、そして「給油支援」の憲法問題もなし崩しにしているのでないか。
 日本人の総意がそれを選ぶならしかたがない。しかし、朝日新聞がこの社説を言うのはその後のことだろう。
 
追記
 読んでおくとよいですよ⇒Editorial - Afghanistan on Fire - Editorial - NYTimes.com
 できればこれも⇒Nato must not shrink from its biggest challenge - Telegraph
 近況⇒Editorial - Downward Spiral - NYTimes.com