日経春秋 春秋(7/11)

人間と魚の関係がもっともっと濃かったころだ。お金をこんなふうに使うことを汚いとか行儀が悪いとか言う人も、魚河岸界隈(かいわい)にはいなかったのだろう。
▼90年後の今。水産白書で春はカツオ、夏はスルメイカ、秋はサンマ、冬はブリ、と季節ごとにお薦めの魚介類を挙げてくれるご時世である。アジやタコだっている、余計なお節介だと文句をつけたいが、そうまでするほどに、日本人の魚離れにお役所が気をもんでいることはよく分かる。

 これが微妙。
 どう微妙か書くのもめんどくさいのだけど、魚は昔から今にいたるまで高級品。ところがそう思えない下魚を庶民は食っていて、どうやらその供給はいわゆる魚河岸や築地ではないっぽい。
 沖縄で漁村に暮らしていて、いろいろ学んだがサンマとかイワシとかは魚の餌であって魚ではない、極言すればなのだけど。考えてみたら、漁師というのは狩猟というか、そういうタイプの人だし、そしてなんでこんな単純なことがわからなかったのかと自分を愚かしく思うけど、狩猟採集とかいうけど、狩猟というのは極めて市場に依存している。もともと魚というのは市場を意識したカネにまつわる高級品だった。
 もちろん、そうではない部分もあるけど。