日経社説 米政府は北のテロ国家解除を再考せよ

 解除には多くの問題がある。
 第1に、今回の取引は合理性と均衡を欠き、核の完全廃棄に向けた交渉をかえって難しくする。
 核申告とテロ支援国家の指定解除は、米国内法上、絡んでいない。しかも北朝鮮は昨年10月の6カ国協議の合意では昨年中にすべての核計画の完全かつ正確な申告をするとしていた。半年遅れの申告である。

 第2に、未申告に比べれば、形式上は一歩前進だが、申告は核兵器に言及せず、検証措置も不明確とされる。北朝鮮のような閉鎖国家は、過去そうしたように査察担当者をいつでも国外追放できる。閉鎖体質がある限り、実効的な検証は難しい。
 第3に、北朝鮮は本当にテロ支援国家ではなくなったのか。2001年9月11日の同時テロと日本人拉致は、ともに文明社会に対する挑戦である。日本に約束した拉致をめぐる再調査は着手されていない。国家テロリストと言うべき拉致実行犯はいまも北朝鮮当局の手中にある。
 第4に、日米同盟への打撃は深刻である。ブッシュ政権はイランには厳しく、北朝鮮にはそうでもない。今回の決定は北朝鮮に対する日米間の脅威感覚の違いを見せつけた。脅威感覚の共有は同盟の前提であり、それがなければ日米安保条約は紙切れに近い。

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