日経春秋 春秋(6/14)

 30年くらい前に「地下鉄漫才」が、大うけした。「地下鉄はどこから入れたんでしょう。考えると夜も眠れない」っていう、あれだ。ちなみに、入れ方は(1)乗り入れのJR線・私鉄線から(2)地上の車庫から(3)トンネルの天井に穴を開ける――の3通りがある。

 ダメだなあ。正解は、(4)最初に埋めておく。
 「掘り進めながら、このあたりに埋めておいたはずなんですが、もっと左の方でしたっけ。もうちょとそっちも掘ってみて下さいな、なんてね、大変ですね、もうそれを考えると夜も眠れなません」だったかな。
 私は春日三球・照代の漫才をリアルに見たことがある。かなり身近で見た。ものすごいパワーというか迫力というか笑いのなかにぎらっとした威厳があった。そしてTVなどではみせない芸をやってのけた。あの時代の芸人は、さらりとTVのメディアと距離を置いていた。本当の芸を知る人はいるから真剣勝負という気概が感じられた。
 春日三球は経歴を見るとインテリではない。だが、この人は恐ろしく知的な人だと私は思った。