朝日社説 イラクと米国―袋小路から出す枠組みを
ひどい社説だなという以上の言及に疲労しそう。ネットでもそうだが、最初に悪意ありきの言説ってどうにかならないものだろうか。
ブッシュ米大統領がイラク駐留米軍の一部削減を発表した。しかし、これは今年1月に決まった増派分の削減であり、形式的な撤退である。イラクの将来を見据え、米軍をどのように引くか。そうした出口戦略はまたもや先送りされた。
「出口戦略」から議論しているがサウジの状況を含め、まだその議論にならない。というか、出口戦略を言うならイギリスの対応をまず論じるべき。あと、今回の削減は一応の成果として出されている。これには異論があるにせよ、その文脈をまず読んで考えるべき。
だが、これは額面通りには受け取れない。先月にはイラク北部で500人以上が死亡する開戦後最悪の自爆テロが起こった。治安の改善とはほど遠い。
これはちょっと詐術。これまでのイラクの不安定化は主にシーア派。そしてかなりたぶん、イランが組織的に関係している。が、北部というのはクルドの問題であり、この地域は基本的に治安が回復してきている。なのに、という点から考えないといけない。
シーア派のマリキ首相がいま一番力を入れているのは、スンニ派やクルド人との国民的な融和だ。これには、シーア派の民衆が嫌がる旧バース党員の公職復帰などが含まれる。容易なことではないが、成し遂げなければ、内戦の泥沼に沈む。そうなれば、中東全域が不安定になるのは避けられない。
すでに方向性としてはバース党復帰の途上に(法整備はまだだが)、今回のブッシュの成果はスンニ派協調の延長にある。
そんな微妙な状況なのに、ブッシュ大統領は「イラク政府は国民融和を達成していない」と批判した。先月には米民主党の有力議員らがマリキ首相の「更迭」を求める発言をした。
この批判だが、民主党が言及されているが、オバマなどもさらに強行に撤退を主張しておりブッシュはそれへの対応がある。
そもそも無謀な戦争を始めて、混乱をもたらしたのは米国だ。
これについてだが、現状では「そもそも」論は無意味。
特に国民融和を実現するには、国際社会が協力し、交渉が決裂しないように支える必要がある。ブッシュ政権は消極的だが、国内の各勢力に影響力を持つイランやシリアを含めなければならない。
まずは、イラクの国民融和を支援する国際会議を開いたらどうか。米国とイラクを袋小路から引き出す枠組みづくりを急がなければならない。
それが理屈ならアフガンで成立している。また、融和の取り組みも試みられている。
現状で言えば、クルドは事実上独立しておりむしろトルコの問題が大きい。シーア派南部もある程度落ち着きつつあるというか手が事実上つけられないのでイギリスも撤退に向けている。中部スンニ派もむしろ米軍と協調している。では、なぜ派手な自爆が起きるかというのは、まさにその派手さに本質があり、以上とは異なる構図がある。というか、スンニ派が米軍と協調しはじめたのがむしろ象徴的。