日経社説 悲惨なダルフールをPKOで救いたい

 社説に取り上げただけ良しとすべきなのだろうか。それにしても。

 スーダンと親密な関係にある中国も含めた全会一致の採択であり、史上最大の2万6000人規模の派遣となる。ダルフールの惨状に対する国際社会の危機感の反映だとすれば日本も対岸の火事ではすまなくなる。

 「対岸の火事」というのはPKOを指しているとしか文脈上読めないのだが、それは最低の認識ではないか。むしろダルフール危機について日本はもっと早期にアクションを起こすべきだった。日本人は、とくに左翼的インテリ層に顕著だが、イデオロギー的な枠をはずした人道問題のセンスが不在だ(というか人道問題がことごとくイデオロギー的に色づけられる)。

 国連によると、ダルフールではジャンジャウィードと呼ばれる民兵組織と反政府系勢力との間で2003年に戦闘が起こり、20万人が死亡し、少なくとも200万人が避難を余儀なくされている。スーダン政府軍はジャンジャウィードと同盟関係にある。

 邪悪な文章だ。BBCを見ているだけで、政府軍が空爆すらやっていたことを報道していた。「国連によると」のしらじらしさはなんだろう。

 欧米メディアはダルフール情勢について大量の報道をしており、それによれば、フランスやオーストラリアが部隊派遣に前向きという。スーダン政府は国連PKOの受け入れに難色を示してきたが、友好国中国が安保理議長だったため、派遣要員をアフリカ各国から募るなどの妥協案が示され、合意ができた。

 「欧米メディアはダルフール情勢について大量の報道をしており、それによれば、」というのは報道社のたる者の発言だろうか。とはいえそれでも日経は言及しているだけマシだというのは。

 しかし英国やフランスには「国連部隊の人数が十分ではない」との声がある。成果を上げなかったAUの活動の二の舞いになる危険性も心配されている。日本政府は外務報道官談話を発表し、決議採択を歓迎したが、日本からのPKO派遣には直接言及していない。

 これは正しい。ただ、別の言い方をすれば危機は惨事として収束に向かいつつある、あるいは周辺国への波及に変わりつつある。構造が変わりつつある。
 日本がすべきことは中国への働きかけであるべきだった。中国に対して国際的な人道問題を利害抜きに真剣に訴えるべきだった。それを日本はしなかった。日本はこの数年の間国家としては実はしらっと黙り込むことで人道に対する犯罪に近いことをやってのけ、そしてやりつづけている。