日経社説 システム障害防止へIT人材の育成を

 IP技術は情報を安く大量に処理するのに適しているが、ひとたび許容量を超えると全体に支障を来す。しかも個人がパソコンや携帯電話から接続できるようになり、想定外の注文が集まる場合がある。6億円の賞金が注目されたサッカーくじや、05年秋の東京証券取引所のシステム停止などはそれに該当する。
 問題はIP技術に精通した技術者や開発を統括できる経験者が日本には少ないことだ。米国の技術だけに、大手情報企業でも個々の機材は外国製に頼っている例が多く、技術面でのブラックボックスがある。若者の理科系離れが進み、特に情報分野は新3K(きつい、厳しい、帰れない)職場として敬遠されている。
 日本ではIT(情報技術)の専門教育を受けた人材は年間1万人弱しか誕生しないが、インドや中国はその20倍に上る。団塊世代の技術者が退職すると日本のコンピューターが動かなくなるという2007年問題が指摘されたが、先月の状況を見る限り冗談でなくなってきた。
 システム会社の業界団体、情報サービス産業協会が対策作りに乗り出したが、本来は国を挙げてIT人材の育成を進める必要がある。重要インフラの安全性のみならず、日本経済の信頼性が問われている。

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