小室直樹関連補足

 アノミー論についてはこれがわかりやすい。
 これ⇒「 危機の構造―日本社会崩壊のモデル: 本: 小室 直樹」
 ただし、文庫にもプレミアがついてしまって残念。
 他にも彼は書いているが、ここを出発点にしないと返って散漫になる。というか、わかりやすく薄めた書籍が多いのだが逆にわかりづらくなっている。ので、上記の書籍がよいのだが。
 しいていうとこれも。
 ⇒「 あなたも息子に殺される―教育荒廃の真因を初めて究明 (1983年): 本: 小室 直樹」
 ただし、これは話がやや錯綜している。
 パーソンズ的な構造・機能分析との関連ではこの対談が秀逸、かつわかりやすい。
 ⇒「 日本教の社会学 (1981年): 本: 山本 七平,小室 直樹」
 残念なことにこれもプレミアム。
 ただ、社会学的にわかりやすいかというと、雑談が多すぎ。
 そのあたりはパーソンズに戻ったほうがいいのだがとりあえず略。
 構造・機能分析と史的なダイナミズムの関連ではこれが、重要なのだがとにかく読みづらい。
 これ↓
 

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現人神の創作者たち: 山本 七平
 このエートスがどのように明治近代を作り上げたかということで、山本は直感的に理解しているが、ヴェーバー的な整理が必要。
 ただ、このエートスがどう時代的に展開されていくかについては、意外とこの本がわかりやすい。
 ⇒「 昭和東京ものがたり〈1〉: 本: 山本 七平」
 ⇒「 昭和東京ものがたり〈2〉: 本: 山本 七平」
 と、書いたものの、入手の難しい本が基礎になってしまって。
 小室のアノミー論と山本の現人神エートス論(史的ダイナミズム)の関連だが、前者が後者の解体を本質としていること。さらにいうと、後者が歴史的に形成されたもので、その形成にあたっては、日本人は深刻なアノミーの歴史を克服した史的経験を持ったということ。
 日本というくにはアノミーを一旦克服することで国民国家となり繁栄していくのだけど、それが擬似的な近代化のなかで奇妙な絶対主義的な国家信仰と制度を作り上げていく。そしてそれが戦後にまた解体される。
 と、そんな感じです。
 あと、現在的な問題でこのダイナミズムの重要点にあるのが昭和天皇で、89年刊「昭和天皇の研究」をもし読まれてないなら、最近別タイトルで復刻が出たのでお勧めしたい。
 これ↓
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裕仁天皇の昭和史―平成への遺訓-そのとき、なぜそう動いたのか: 山本 七平
 ただ、このレベルでも、日本の左翼は天皇制擁護論だとか、天皇の戦争責任を見逃すものだとか、そういう単純な議論になってしまう。あるいは、山本のこの著作以降の新資料をもってバランスを崩した議論をする。
 そのあたりのリアクションはもうちょっとどうしようもないという感じ。
 天皇制をメカニカルに除去して済む問題じゃないもっと日本史全体の宿痾みたいなものがあるので、そこを見極めるとき、昭和天皇という奇妙な「異人」がどのように歴史の照射を受けたかと考えるといい。すごく単純にいえば、昭和天皇というの脳ミソは欧米人です。ただ、その倫理規範は日本人以外のなにものでもない。