日本は性的なものがあふれているか

 森有正的にいうと、そうではないのだろう。じゃ、あれは何?
 セクシーというのではなく、たぶん、欧米人には、incestuousと感じられるものだろうし、それは語気的なincestuousというより、homosexualなものだろう。甘い感じというか、土居健郎が定義した「甘え」に近い。この概念は、日本社会では「甘ったれんじゃねー」の「甘え」と理解されているが、その理解は間違いで土居はきちんとフロイディアン的に定義している。
 逆に言えば、日本はセクシーではない。
 ではセクシーとはなにかだが、森有正はそのベースにあるものをanguishと言った。彼はこれを狭隘感としても捉えていたと思う。個人が個人であることの傷の断面のひりつきのような感じだろう。あの感覚は日本にはないし必要があるのかわからない。
 むしろ世界が潤沢になるにつれ日本的なincestuousな優しい世界になろうとしているというか、その反面で暴力が生まれている、どういうからくりなのかわからないが。