日経春秋

 ⇒春秋(3/15)

 全身を綿で包み、さらに包帯でぐるぐる巻きにして、真夏も部屋を閉め切って思索に耽(ふけ)った。ナポレオンのエジプト遠征に従軍して以来、数学者ジョゼフ・フーリエは偉大な文明は砂漠の炎暑から生まれると信じていた。奇人である。
 この19世紀のフランス人は、後に芸術界に起きる変革までは夢想しなかったろう。1960年代に登場した電子楽器シンセサイザーの原理は「フーリエ解析」である。どんな複雑な音の波形でも分解すれば三角関数が描く山と谷の単純な曲線になる。フーリエの恩恵で音楽家は新しい音色を次々と作り出し、きらめく音文明が開花した。

 なんだかなぁ。釣られる?