鉄人28号 第25話 黒部の危機

 完璧だ。これほどパーフェクトの物語を見たことがないな。
 大筋はわかっていたが、やられたな。
 クロロフォルムのトリックはもうそれほどではないが、そう、黒服の男は、ソ連だった。そう、私は分かっていたじゃないか、この物語は冷戦と核なのだ、と、と、自分につぶやいてそれが信じ切れなかったのだ。
 テクニカルには、黒部のニコポンスキーはソ連スパイだった。そして、それがベラネードの謀略にかかっていたというあたりの解説は、今回のこの程度の切り上げかたで美しい。このプロットあわかる人がわかればいいのだから。あざやかすぎるな。そして、今回、村雨がきちんと査問会のクロロフォルムを敷島だと言っていたわけだ。完璧。ストーリーの漏れはない。梅小路のエピソードもつないだ。しかも無理はない。ロビーの話は、その後のブラックオックスの暴走にきちんとつながっている。
 ブラックオックスの暴走は、連想としてはあの時代の大衆の暴動を連想させる。ま、それは連想というか芸術のイメージの問題だ。
 そして、そして、次回、鉄人が完全になるのだ。最強の鉄人を出すために、これまで弱々の鉄人だったわけだ。これは次回最終回は祭り!!!ロボットアニメの最高エクスタシーだね。
 そして、最後に鉄人を溶鉱炉で溶かすというのは、これは、今川のストーリーではなく作者横山横山光輝のストーリーというか意志だったのだ(ほんとだ、だから横山は鉄人28号の物語の完成を今川に賭けたのだから)。もっともそれを今川はじっと何十年も信じ、ここまで物語をくみ上げたのだろう。すげーよ。サイコーだよ。横山にこれを見せてあげられないというのは、なんて悲しいことなんだ。
 物語として、その対話性を重視するドラマツルギーもすごい。村雨というのはまさに戦前と戦後を繋ぐ意志だ。そしてそれを正太郎がどう受け止めるかというところに、戦後のすべてがかかっている。そして、それが今、明確に意志として物語りとして受け止められるということは、たぶん、それこそが、文学だろう。ただ、文学なんて言っちゃ、この物語を貶めるかのようだ。