思い出 浅田彰

 あれはいつ頃だったか、構造と力のあとだったと思うが、新宿の紀伊国屋で六階とか(洋書売り場だったか)にいくとき、エレベータに乗り合わせたのが彼。浅田彰とふたりきりでエレベーターに乗るというのは変なものである。それが不思議と途中階であかないので、じっと、彼のポマード固めのような頭を見ていることになった。というのも、あれっと思うほど背が低かった(軽蔑とかではないのでウンコなげないように)。こんなに背が低いのかと思った。メガネは牛乳瓶底系だったと思う。なんとなく、中年のおばさんという雰囲気が漂っていた。
 知り合いが本の企画だけで、浅田と食事して話をきいたが、もう爆笑話の連続だったとのこと。わからないではないなと思う。
 福田和也が浅田を評してフェアだと言う。ヤッシーとも仲がいいのは衆知。
 で、思うのはアレだね。俺もややそうだけど、福田といい田中といい、おぼっちゃまんだよな。全共闘の世代とかだったら、やってらんないよ組というか。この昭和30年代的中産階級的感性っていうのはなんだろね。
 その後、昭和40年以降は、比すべき貧しさはなくなったので、ある意味で、浅田や田中みたいなのが当たり前に語られない感性になってきた。その後はさらに。