誰かの願いが叶うころ……よくわからん

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誰かの願いが叶うころ: 音楽: 宇多田ヒカル
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誰かの願いが叶うころ: DVD: 宇多田ヒカル
 昨夜寝付かれず、この歌をなんども聴いた。
 CASSHERNは見ていない。見ればわかるのか。
 紀里谷の映像は見た。紀里谷はこれを彼女のファミリーの悲劇と読んでいるように思うし、そこはとなくそのファミリーに絡み込んだ自分への自嘲の感触もある。そのあたりの紀里谷の思いが宇多田にどう理解されているかわからないし、宇多田はこの歌の謎をたぶん紀里谷に語っていない。

小さなことで 大事な物を失った
冷たい指輪が 私に光って見せた

 たぶん、指輪は結婚指輪だろうし、主人公が嵌めているのだろう。そしてそれはとりあえず宇多田だろう。が、そう解釈するのは下品過ぎる。ある女としよう。
 その女はは結婚指輪を得たことで、なにか大切なものを失った。もちろん、それは男だ。今の乾きのなかで目先の男を選らんだ女。そして、あとから気付いた大切なその男へ続くドアはもうない。

あなたの幸せ願うほど わがままが 増えていくよ
それでも あなたを引き止めたい いつだってそう
誰かの願いが叶うころ あの子が 泣いているよ

 女はわがままだったと自分を責める。
 わがままとは? 男を引き留めること。でも、それは、たぶん、できなかった。
 女は別の目の前の男と結婚した。そしてそれはたぶん、あの女の恋人を略奪。
 あるいは……

皆に必要と去れる 君を癒せる たった一人に
なりたくて 少し我慢し過ぎたな

 「君」は誰だろう。「あなた」ではないのか。
 男にとってのただ一人の女でありたくて我慢した、と女は言う。そしてそれに失敗した。自分が幸せになりたかった。それは「わがままではないでしょ」と言う。彼女はどうしたのか。目先の男と結婚することは、その時、幸せということだった。

私の涙が乾くころ あの子が 泣いているよ

 「私」である女は泣き止む。そして失われた女は泣き続ける。

このまま 僕らの地面は 乾かない

 「僕」とは誰だろう。「私」なのだろうか。
 男だろうか。
 男は泣いているという。なぜか。
 男は本当に女が好きだった男か。そうではなく、当て馬にされた男ではないのか。