猫猫先生述懐するに

 ⇒猫を償うに猫をもってせよ - 古典はいつ読み終わる

 先日、ゴーゴリの「死せる魂」と、ゾラの「居酒屋」を、いずれも百円くらいで古書店で買った。どちらもまだ読んでいないが、はて、自分はいつになったら、このレベルの古典的文学作品、あるいは古典的著作を全部読んでしまうのだろう、と考えた。

これほど読みに読んでも古典的作品を読み終わらないのに、新作小説の片々たるものなど読む人は、何であろうか。そういえばトゥキュディデス「戦史」もまだだ。

 私も同じ嘆きを持つ。まあ、猫猫先生とは嗜好が違うし、私は後期モームや後期ヘッセからは強い影響を受けた。
 「月と六ペンス」なんか現代でもまだまだ面白いと思う。この作品はゴーギャンの文脈や芸術家の文脈で語られることが多いが、女という奇っ怪な生き物という点で読むのほうが面白い。

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月と六ペンス: モーム,行方 昭夫

平成の時代の優れた翻訳, 2005/11/13
レビュアー: kobeprof - レビューをすべて見る
 英語の教師としてモームの作品を教材にする際、中野訳(ものによっては龍口訳)を参考にすることもありますが、古文・漢文的知識を読者への当然の前提としている中野訳、龍口訳では少なからぬ大学生にとり歯がたたない表現が散見されます。その点、今回の行方訳は、英文の理解の正確さを踏まえた上で、若い読者にわかりやすい日本語で訳されており、自信をもって「平成の時代のモーム定訳」と呼びうる仕上がりになっています。名訳といわれる中野訳にもある誤訳をしっかり修正している点も見落とせません。

 原文はパグリックドメインになっているので訳が気になるところがあれば原文を参照するといい。
 ⇒Moon and Sixpence by W. Somerset Maugham - Project Gutenberg