日経春秋 春秋(5/28)

 ああ、野暮としりつつ……

団塊世代が来年以降60歳定年を迎えだす。2007年問題と言うが、当の人々の内面で1番の問題は、退職を機に半生をどう総括するかだろう。そのとき、伊勢物語が描く業平の半生は一つの慰めとなる。皇孫に生まれ並外れた歌才と美貌(びぼう)に恵まれながら、恋は成らず「身を要無き者に思い」都落ちし果ては老残不遇をかこつのだから。

 当時の人の一生は五十歳くらいでおしまひだったのだよ。