魚屋…

 板橋で暮らしていたころ近所によい魚屋があった。
 なにがよいかというと、通っていくうちに、こちらを覚えてくれた。ま、そうお大名というわけでもないが、魚を買うカネをけちらなかったからかもしれない。
 で、今日はこれがうまいよ、というのである。ほう、そうか、それくれ。
 で、これはこうして喰うとうまいよともいうのである。ほう、そうか、そうしよ。
 という具合である。
 魚のことは魚屋がよく知っている。
 で、私としては、そうか魚屋というのが重要なのだと思った。
 魚というのは、プロが見ると、ぜんぜん違うなにかなのだ。
 これは沖縄で暮らしても、役だった。
 海人は魚にブライドを持っているのだ。というか、うまい魚を知っている。
 沖縄の魚は、あれだ、ハタ(ミーバイ)がうまかった。ああいう魚をこんとこ喰ってない。
 話はずっこけるが。
 総合的にうまい魚は鯛だ。困ったことにというか、養殖物でもそれなりにうまい。
 他に手がないときは、鯛にするのが安全牌だ。