10月2日
また日記が3日ほど抜けた。昨日は筋トレ。
ひさしぶりに社説にコメントでもしてみるかな。
朝日新聞デジタル:社説 17年ぶり消費増税―目的を見失ってはならぬ(リンクは当日のみ)
それでも、消費増税はやむをえないと考える。
借金漬けの財政を少しでも改善し、社会保障を持続可能なものにすることは、待ったなしの課題だからだ。
「社会保障と税の一体改革」という原点に立ち返ろう。
冒頭のこの切り出しからおかしい。今回の消費税増税に反対している人でもマクロ経済が常識程度にわかっている人なら、コアコアCPIの上昇が定着するのを待てということで、時期の問題。これを「待ったなし」とするのが詐術。なので、以下を読む必要もないほどだが。
国債を中心とする国の借金の総額は国内総生産(GDP)の約2倍、1千兆円を突破した。今年度の一般会計では、新たな国債発行が40兆円を超え、予算の半分近くに及ぶ。
最大の原因は、高齢化に伴う社会保障費の伸びだ。医療や年金、介護の財源は、保険料や窓口負担だけでは足りない。国や自治体が多額の予算を投じており、国の社会保障費は年に1兆円ほど膨らみ続ける。
将来の世代に借金のツケを回しながら、今の世代の社会保障をやりくりする――。こんなことをいつまでも続けられるはずがない。社会保障を安定させ、財政の危機を未然に防ぐには、今を生きる私たちがもっと負担するしかない。
これも詭弁のようなもので、この文脈に見合う消費税は20%くらい。その意味では、20%への過程としての背景があるのかもしれないが、財政再建の基本は国家の税収を上げることで市場の活性化が中心になる。少なくともそれを組み合わせないと意味がない。
では数多い税金のうち、なぜ消費税なのか。
社会保障による給付は高齢者向けが中心だ。お年寄りの割合は上がり続けており、所得税など働く世代の負担だけに頼るわけにはいかない。
しかも、現役組は賃金が増えないなか、子育てや教育、住宅など多くの負担を抱える。支援を強化しないと、人口減少に拍車がかかりかねない。
こうした点を考えれば、国民が幅広く負担し、税収も安定している消費税が、社会保障の財源に最もふさわしい。
これは相当に変な議論。逆進性が正しいと言っているに等しい。そもそも議論は、消費税の逆進性を補正して税の楔(tax wedge)(参照)を軽減するようにしなければいけない。
それと政治議論からすると、消費税というのは本来地方税であって、国家がぶくぶくと太るような国税(財務省の権力根拠)としていくことには本質的な問題がある。
あわせて豊かな人たちを対象に、所得税や相続税を強化する必要がある。格差を縮めるためにも不可欠だ。ただ、これだけで消費増税に匹敵する財源を確保するのは難しい。
これも相当に変な話。国税の徴収は厳正に行われていない実態の改善が先決のはず。おそらく10兆円くらいの捕捉が可能。
業者間の取引に、税額を明示したインボイス(明細書)を導入すべきだ。商品やサービス自体の価格と消費税分の区分けがはっきりすれば、取引時の転嫁がしやすくなり、立場の弱い中小事業者が泣き寝入りすることも減らせる。
これは正論だが、そもそも論であり、先の税捕捉と合わせての議論になる。
あまり暴言を言いたくないのだが、こんなのが朝日新聞の社説なんだから、読む必要はないよ。
あと、以下はメモ。
しかし、対策の柱がなぜ、法人税の減税なのか。
政権は、与党内の根強い反対を押し切り、法人税の減税方針を打ち出した。東日本大震災の復興費にあてる上乗せ増税を予定より1年早く今年度で打ち切ることや、その先の税率引き下げの検討を急ぐという。
企業は経済成長の担い手であり、雇用の場でもある。国際的に法人減税の競争が続いているのも事実だ。
ただ、日銀の統計では、企業(金融を除く)は現金・預金だけで220兆円も抱え込んでいる。多くの企業は、収益が上向いても使おうとしない。
まず、こうした現状を改める必要がある。安倍首相は税率引き下げをテコに賃上げを迫る構えだが、財政への影響が大きい一律減税の前に、賃金や雇用、投資を増やした企業の税負担を軽くする手立てに集中すべきではないか。
基本はデフレ下で「多くの企業は、収益が上向いても使おうとしない」は当然のことで、議論が倒錯。
消費税率8%へ 景気と財政へ首相の重い決断 : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)
問題なのは、ようやく景気が上向いてきた日本経済が来春の消費増税で失速しないかどうか、不透明なことである。
日銀の9月企業短期経済観測調査(短観)で、大企業の景況感は大きく改善し、リーマン・ショック前の水準に戻った。だが、今後はペースが鈍るとみられる。
コアコアCPIが低迷しデフレが継続しているなかで消費税増税をすれば、明白に経済は低迷する。不透明なのは、どこまで落ち込むかということ。
さらに懸念されるのは雇用情勢だ。8月の失業率は3か月ぶりに4%台に上昇し、サラリーマンの給与も減少が続いている。
首相は、「大胆な経済対策を果断に実行し、景気回復のチャンスを確実にする」と述べた。
これは全面的に間違いではないが、雇用情勢の改善の基本はデフレ回復に後続すること。だから、まずデフレの解消が重要だった。
首相の主導で実効税率引き下げに道筋をつけた意味は大きい。
ただし、消費税を増税する一方で、企業減税することに対し、国民や与野党から「企業優遇だ」などの批判が出ている。
経済成長の主役は民間企業である。政策支援を追い風に、企業も内部留保を投資や賃上げに活用するなど、経済成長の「好循環」に貢献することが求められる。
経済対策は約5兆円と、消費税率2%分の規模を確保するが、「見かけ倒し」では、景気を十分に支えることはできまい。
減税措置などを幅広い企業が利用するかどうか、政府は成果を検証する必要がある。
消費税の増収分を当て込み、不要不急の公共事業を拡大することも避けるべきだ。
この点は正論。
コメなどの生活必需品や、民主主義と活字文化を支える新聞の消費税率を抑える「軽減税率」の方が、低所得層など広範な消費者に持続的な恩恵が及ぶはずだ。
「新聞」は笑いを狙ったギャグだがこれもそもそも論で、現下の議論とはスジが違う。
社説:消費税8%へ 増税の原点を忘れるな− 毎日jp(毎日新聞)
安倍政権はこの2、3カ月、経済状況をみて引き上げを実施するかどうかを判断するという「景気条項」に基づいて、対応が揺れた。
毎日新聞のこの社説はコメント以前の状態。全体も議論になっていない。
消費増税を財政改革の出発点に :日本経済新聞
すまん、何を言っているか論旨を追うことができなかった。
今の安倍政権に足りないのは歳出抑制の覚悟だ。その本丸は社会保障費の効率化にある。高齢化の進展などに伴って自動的に膨らむ年1兆円規模の「自然増」を放置したままでは、消費税率を2ケタに上げても追いつかない。
そもそも歳出抑制の枠組みで考えられる問題ではないのだが。
東京新聞:増税の大義が見えない 消費税引き上げを決定:社説・コラム(TOKYO Web)
一体、何のための大増税か−。疑問がわく決着である。重い負担を強いるのに、血税は社会保障や財政再建といった本来の目的に充てられる保証はない。公共事業などのばらまきを可能とする付則が消費増税法に加えられたためだ。肝心の社会保障改革は不安が先に立つ内容となり、増税のための巨額の経済対策に至っては財政再建に矛盾する。増税の意義がまったく見えないのである。
安倍さんもその矛盾はわかってはいるのだろうけど。
本来なら「社会保障改革のために財源がこれだけ必要となり、そのために消費税を何%引き上げる必要がある」と国民に理解を求めるのが筋である。財政再建を理由に、先に増税ありきの財務省が描くシナリオに乗るから齟齬(そご)を来すのである。消費税増税の理念は変質し、国民に負担を求める大義も失ってしまったといっていい。
それもそうなのだが、それだと20%くらいの議論になり、その前にデフレ脱却が課題になる。
さらに法人税は赤字企業には課せられないが、消費税はすべての商取引にかかり、もうかっていなくても必ず発生する。立場の弱い中小零細事業者は消費税を転嫁できずに自ら背負わざるを得ない場合がある。このままでは格差を広げ、弱者を追い込む「悪魔の税制」になってしまう。
消費税を増税する一方、法人税は減税を進めようというのは大企業を優先する安倍政権の姿勢を物語っている。消費税増税で景気腰折れとならないよう打ち出す経済対策も同じである。五兆円規模のうち、企業向けの設備投資や賃上げを促す減税、さらに年末までに決める復興特別法人税の前倒し廃止を合わせると一・九兆円に上る。公共事業などの景気浮揚策も二兆円である。
この批判は妥当。
国民から吸い上げた消費税を原資に、財界や建設業界といった自民党支持基盤に還流されたり、減税に充てられる構図である。過去に経済対策と銘打って公共事業をばらまき、借金を積み上げた「古い自民」の歴史を忘れてもらっては困る。このままでは社会保障の充実も財政再建もかなわないまま、消費税率だけが上がっていくことになりかねない。
それが「自民党」だった。
東京新聞は長谷川さんがいることからマクロ経済に配慮した論点が見られたものだが、この社説にはその痕跡は見られない。どうしたんだろうか、東京新聞という印象のほうが強い。