日経社説 ジンバブエの非民主的選挙

 ムガベ大統領は何が何でも権力にしがみつこうとしたと言われても仕方あるまい。

 私がこの間見てきた印象だが、ムガベ本人というより、軍部と特権階級の問題にありそうだ。なのでこの構造があるカタストロフを起こすまで、たぶん、どうにもならないし、ちょっと踏み出していえば、この特権階級は実質的には中国的な世界平和の内部にある。では、中国がこの国を指導していけるのかといえばそうでもない。中国にはもはや国際戦略的な統一意志はないし、国内の権力闘争の外部的な表現にしかなっていない。中国の知識人の苦悩は泣けるほどわかる。

日経社説 何のための税制改革かを明確にせよ

 忘れてならないのは、法人税や金融課税のあり方など、経済の活力にかかわる税制の改革である。
 企業が国境を越えた事業展開を加速する中では、法人税負担を可能な限り和らげ、魅力的なビジネス環境を整える必要がある。金融課税も将来は金融所得をまとめて課税対象にできるよう、損益通算ができる範囲を広げることが求められる。

 法人税負担の問題だが、どうも日本はそのまま欧米諸国とは比較できない構図がありそうだ。流通でかかるコストの問題ではないかと思う。
 この問題はデフレ下の名目金利と実質金利の問題の構図のように、環境の全体構図のなかで、実質的な法人税負担はたぶん欧米以上にかかっているように思える。
 そのあたり、すっきりとした議論を読んでみたいのだが、どこかにあるだろうか。

産経社説 【主張】ジンバブエ 国際社会は厳しい対応を - MSN産経ニュース

 日本政府、主要国(G8)外相会合、欧米諸国が相次いでムガベ政権を非難し、AU諸国には国際平和維持部隊の投入を求める声すらある。中国にも、国際社会の平和と安全を担う国連安保理常任理事国としての責任をきちんと自覚してもらいたい。
 ジンバブエで起きている状況は人道・人権面でも、政治弾圧のひどさでも、国際社会の忍耐を超えていると言わざるを得ない。ムガベ政権の対応を改めさせるためにも、G8首脳会議や国連安保理の場で、制裁も含めた厳しい対応を早急に進める必要がある。

 たぶん、その「正論」の挫折はダルフール危機に似た蹉跌の潜在的な構図にある。
 どう考えても、ジンバブエがそれでやっていけるわけはないが、国際世界はもうどうしようもない。
 産経の「正論」の先には、イラク開戦のような構図が潜んでおり、それはもう歴史的に再現されることはないだろう。

毎日社説 社説:沖縄戦学習 力合わせ実りあるものに - 毎日jp(毎日新聞)

 沖縄戦は実際に現地で自分で調べた範囲ではかなり重要なことが依然わかっていない。古老の証言からは、通説と違う証言もある。
 部分によっては右派左派にとっても都合の悪いさまざまなディテールがあり、こうしたイデオロギー的な枠組みをいったん除いたほうがいいと思うのだが、そうもいかないのだろう。

 学童疎開船「対馬丸」撃沈の惨劇。そして今の中学、高校生の年代に相当する男女学徒らを「鉄の暴風」と呼ばれる戦場に動員した沖縄戦は、学校教育の場で児童生徒の心をより深くとらえ、考えさせる。
 一般住民を巻き込み、犠牲を強いる総力戦。本土決戦準備のための時間稼ぎをする「捨て石」とされた沖縄戦は、最後は住民も見捨て、集団自決にも追い込んだ。さらに戦後の米軍統治、復帰後も続く広大な基地の圧迫。今もあの戦いの延長上に沖縄はある。

 対馬丸には以前少し触れた。
 ⇒極東ブログ: 対馬丸メモリアルデー
 このころはまだ自分は沖縄生活の精神的な延長があったので、きつく書いた。今ならこうは書かないだろう。
 あと本土の沖縄学習でこれはどうにかしてほしいなと思うのは、「さらに戦後の米軍統治、復帰後も続く広大な基地の圧迫」という本土的な視点ではなく、戦後日本が米国から独立した52年から72年まで日本国から見捨てられた沖縄米軍統治時代とはなんだったかを本土の人が学習しないと、いつまでたっても現代の沖縄理解など得られない。
 もうすこし踏み込んで言うと、戦争体験の沖縄の世代と、団塊世代に相当する沖縄の世代、さらに復帰後世代に横たわる奇妙な断層があり、その少なからぬ部分が、本土イデオロギー的な枠組みの色合いを持ち、それでいながら各層で、沖縄の人たちは、どうもそれは実感としては違うと思っている。あえて言えば、戦前の皇民化の正義と戦後の本土平和イデオロギーの正義も、どちらも沖縄の歴史体験の実感とのズレをいごこち悪く感じている。
 池宮城秀意のこれはよく読まれているが。

cover
戦争と沖縄 (岩波ジュニア新書): 池宮城 秀意
 こちらの部分が見落とされがち。
 ⇒「 ヤマト嫌い―沖縄言論人・池宮城秀意の反骨: 森口 豁: 本」
 ただ、同書で池宮城の全貌がよくわかるわけでもない。
 
追記

2008年07月01日 yingze 望むなら日本から独立すれば良い

 シーレーンと海域の大半を日本は失うことになるんだけど。

毎日社説 社説:スーダンPKO 平和構築参加には意義がある - 毎日jp(毎日新聞)

 併せて指摘しておかなければならないのが、スーダンの石油資源をめぐる中国への対抗である。同国産原油の輸出先は、06年には日本がわずかに中国を抑えてトップだったが、07年は日本の輸入が微減、逆に中国が倍増させて半分以上を占めるに至った。中国はスーダン政府に太いパイプを持ち、今や、ダルフール紛争をはじめスーダン政府に行動を迫る場合、中国抜きには考えられないほど存在感が増している。UNMISへの参加は中国を強く意識したものでもある。

 ほぉ、そこをちゃんと言ってますね。毎日新聞ダルフール問題を含め、アフリカ問題については継続的な知識の蓄積がある。中国様の手前もあるのでなかなか言いづらいのだがこのくらい言えるならいいかな。
 実際にはこの先の問題があって、中国は最近むしろ積極的にダルフール問題に関与の姿勢を見せている。そしてそれを強調するのだが、現実的には国連の動きと同調していない。米国は、いろいろ言われているわりにブッシュ政権はこの問題にそれほど関心を持っていない。たぶん、オバマ政権になっても同じだろう。代わりにヨーロッパが植民地との関連で深い関与を持っているのだが、中国との協調は少ない。

読売社説 学力テスト検証 “宝の山”を活用してほしい : 社説・コラム : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

 報告書には、テストと生活習慣調査の結果の相関関係を分析する専用ソフトを開発した例や、家庭での学習を習慣づけるため退職教員や学生らによる支援員を設けた例などが紹介されている。
 新潟市では、知識を実生活で活用して問題を解決する能力を養うため、モデル授業を市教委の指導主事らが作り、小中学生を相手に実演してみせた。参観した教員には非常に参考になったという。
 テストの分析結果は“宝の山”だ。大いに活用してほしい。今後は、各地の分析結果をもう少し早く公表する工夫も必要だろう。

 大学教授らによるこの会議では、専門的な見地からテスト結果を分析・活用する方策が検討されている。統計学の手法を使い、結果と習熟度別指導・少人数指導の相関関係を調べるなど、今後の施策に生かせそうな内容もある。

 “宝の山”である説得力がこの社説では自分には感じられない。
 テストの問題文を見てみたいのだがネット上にはなかった。ざっくりした印象では、これは問題の作り方でどうにでもなる部分は大きいということと、日本社会に成員としての学校外で以前なら身についた知識の欠落はありそうだなということだった。

朝日社説 スーダンPKO―腰が引けすぎていないか : asahi.com(朝日新聞社):社説

 スーダンでは80年代初めから、20年以上にわたって内戦が続いた。05年に包括和平が合意され、国連PKOが派遣された。これとは別に、5年前から西部のダルフール地方でも紛争が続く。住民が政府系の民兵に組織的な迫害を受けるなど人道問題として国際社会の関心が高い。
 スーダンはアフリカでの平和構築を語る時の象徴のような存在でもある。
 それだけに、福田首相や外務省はスーダンPKOへの参加に前向きだった。ダルフールはまだ危険すぎるが、南部ならばという判断だろう。だが、防衛省は治安などを理由にまとまった部隊を出すことに慎重で、結局、少数の司令部要員を出すという今回の折衷策に落ち着いたようだ。

 朝日新聞からこうした声を聞こうとは。
 切り分けていうなら、日本がPKOとして関われるのは南部問題だけ。ダルフールについては直接的には無力。むしろ、中国と米国がこの問題に関与できるので、そこに間接的に働きかける平和のイニシアティブが欲しいのだが、左派は中国に頭が上がらず、右派は米国に頭が上がらない。右派左派の反米共闘はナショナル過ぎて国際平和に関心がない。